小原式水平型精密日時計

精密さを極めた水平型日時計の魅力

小原式水平型精密日時計

設置場所の緯度・経度に合わせて作られる、5分刻みの時刻目盛りをもつ、その名の通り精密な日時計です。国立科学博物館に設置されたものが最も正確で、時差わずか4秒といわれましたが、現在はその役割を終えています。2022年6月10日「時の記念日」に、日本の標準時、子午線上の明石市立天文科学館に設置しました。

初代・小原銀之助氏が考案し、現在はその志を受け継いだ日時計作家・小原輝子氏が設計・製作を手がけています。今回は、長年にわたり全国各地に精密日時計を届けてきた輝子氏に、そのこだわりと想いを伺いました。

明石市立天文科学館に設置された「小原式日時計」

◼︎日時計とは

日時計とは、太陽の光を影に置き換えて時刻を知る道具です。紀元前3000~4000年頃には古代エジプトで使われていました。
日時計と一口に言っても、多種多様な種類、様々なサイズのものがあります。ヨーロッパの教会の塔や建物の壁に、垂直に付けられ遠くから見るのに適している垂直型日時計、玩具のコマに似たコマ型日時計、円弧に目盛りを刻んだ円環型/円弧型日時計、そして我々ダイカンが製作している、水平に時刻盤を設置し最も見やすい水平型日時計。自分の影が時刻を示す楽しいかげぼうし型もあります。

製作素材
ステンレス
ノモン(ノーモン、グノーモン)
影を作る三角形で「天の北極」を指します。
地球儀
直径130mmの地球儀は、小原式日時計の一番の特徴です。
天文学的に正しく取りつけます。
地球儀で見る朝から夕、夜への移りは、本物の地球と同じです。
日時計を見ている今の昼の国、夜の国、白夜・極夜の現象が見られます。
時刻文字盤
6時~18時の5分刻み、東西南北八方位、磁北、緯度経度、標高、二至二分の日の出入りの方位、都市山岳の方向、学校名、公園名などを表示します。
※文字盤の基本サイズは、φ360、φ450です。
※時差表と説明プレートを製作取りつけます。

◼︎小原式精密日時計の特徴

小原式精密日時計の最大の特徴は時刻の正確さ。
その正確な時刻の影を作る「ノモン」と「時刻目盛り」は、設置する場所の緯度・経度より導き出します。この「ノモン」が指す先は天の北極・およそ北極星の方向です。

もうひとつの特徴はノモンの先端の地球儀です。
体積で10の24乗分の1、直径130mmの大きさで、これは飾りではなく、実は天文学的に計算された正確な角度で取付け、地球に当たる太陽の光りがそのまま地球儀に差しています。 今の昼や夜の国、白夜・極夜の現象が見て取れる設計となっています。私たちがこの地球儀を見ている瞬間の地球を想像してください。この地球儀に当たる光は宇宙船から見た地球のそれと全く同じです。

天文学的に計算され取付けられた地球儀。
当たる光はいま現在宇宙船から見てる地球と全く同じです。
2024年10月17日 13時30分 撮影 影は13時45分
2024年10月17日 13時45分 撮影 影は14時00分
2024年10月17日 14時00分 撮影 影は14時15分
均時差表 ステンレス腐蝕プレート

【均時差表の見方】
上記写真は10月17日に撮影。
その日の均時差表(赤線)をたどるとその日は約ー15分、影が示した時刻から引くと、現在の時間となります。

◼︎考案者:小原銀之助

小原式精密日時計は、サンダイアリスト・小原輝子氏の父、小原銀之助氏(1898~1983)によって考案されました。
第一号日時計は、昭和28年(1953)に当時の丸子多摩川園(東京)に納められましたが、時刻が全く合わず「非時計」だったと銀之助氏は言っています。その後、銀之助氏はある小学校の先生から日時計製作の依頼を受け、天文学の書を読み、独学で天文学を駆使した時刻盤と時差表も作成、いまの小原式精密日時計の設計の基本を確立させました。


写真:小原 銀之助さん
1898(明治31年)〜1983(昭和58年)
神奈川県卓越技能者賞 受賞
相模原市市民文化賞 受賞

銀之助氏が生涯で納めた日時計は400基以上にのぼり、上海、ドイツのハンブルク、アメリカのフィラデルフィア、ホノルル・ハワイ大学天文学部、そして日本各地にあります。

銀之助氏の作った日時計は常に太陽の光をリレーし地球上で途切れる事なく時刻を示し続けます。それは銀之助氏の生涯の夢であり自身の力で実現させ、ドイツでは「日時計の王様」と賞されたそうです。

昭和60年に発行された
太陽をつかまえた「日時計の王様」小原銀之助物語
ドイツ ハンブルクの記念品

◼︎父から娘への継承

父銀之助氏の日時計製作を間近で見てきた長女・輝子氏は、自然な流れでその仕事を手伝い運転免許を取得し、銀之助氏と現場に同行し、職人さんのところへも通ったそうです。しかし、ご本人は数学が無いから美大に進んだほど、数学が大の苦手でした。sin・cos(サイン・コサイン)などの三角関数の計算は、妹の敬子氏の担当でしたが、銀之助氏没後は日時計作家として父の仕事を継承されました。

◼︎小原輝子氏の日時計の精度へのこだわり

造園家、造形作家、天文愛好家などが日時計をつくることはあっても、日時計の作家はほとんどいません。とくに小原式精密日時計は、科学としての正しさに対する深いこだわりがあります。
輝子氏は「父は天文学を学び、精度の高い日時計をつくる努力をしていました。私も精度は表現したいと思います。自然科学に対して、自分の都合で安易な妥協はできません。それは父のように今でも守っています。」
小原式精密日時計には日本標準時(兵庫県明石市)との時差を補正する均時差表が必ずついています。日時計の盤面で読む時刻は、その場所の「地方真太陽時」だからです。輝子氏は「できあがった日時計を現地に設置するとき、日時計と太陽と地球に居る私が一体となる感じを受けます。日時計の盤面に美しく正しい影が生まれ影の動きは止まりません。その影の動きこそ宇宙の一員として地球が常に動いている証拠です。」と話しました。

Y座標X座標の計算の数字がびっしり書かれたノート

父、小原銀之助を継いで、小原式精密日時計の作家となる。
精度の高い日時計を吉里吉里海岸公園やマリンピア神戸をはじめ、全国各地の学校や公園など、国内外に約70基を製作。日時計作家の第一人者として活躍。

写真:小原 輝子さん
都立駒場高等学校芸術科美術卒業
多摩美術大学卒業
多摩美術大学神奈川同窓会ALTE元会長
平和堂貿易「時の功労賞」受賞(1985年)

◼︎ダイカンとの出会い

銀之助氏が日時計の製作を開始した当初は、金属や石の加工などを東京で職人さんに依頼していました。輝子氏に引き継がれてからは、高齢化による加工職人の廃業などもあり、苦労している輝子氏を見かねて、株式会社インプレスの稲葉亘快氏(1933~2023)を介し、岡山の株式会社デンショク様経由でダイカンへの第一号の発注がありました。

当時、ノモンの角度について、精度が重要であるという認識も薄く、一般的な小数点のない角度でカットし納めました。しかし、製作角度は00°00’00’’の単位まで必要で記念すべき第一号は大失敗、作り直しになってしまいました。

ノモンの角度調整
函館山日時計 函館開港150年(2009年)を記念して、2008年6月に設置

その後、株式会社デンショク様より「これからは、直接やり取りを」との申し出があり、株式会社インプレス稲葉様と弊社との直接のお取引が始まりました。
稲葉氏は飾り物ではない精密日時計の奥深い魅力の虜となり、仕様の工夫や台座デザイン、設置工事の立合いまで、輝子氏と二人三脚で携わってこられました。

◼︎これからの小原式精密日時計

日時計作家として、長く活動されている小原輝子氏より、小原式精密日時計の設計・製作を、株式会社ダイカンで受け継ぎ作り続けて欲しい旨の、ご相談がありました。弊社としても担当者は三代目の現在まで、その経験を積み上げてきました。サイン・ディスプレイとは少し趣の違った製品ですが、今までの心意気を引き継いで、これからも小原式精密日時計の製作を続けてまいります。
現在の弊社担当、前担当とも、親子以上に年齢の離れた稲葉氏・小原輝子氏より学ぶことが多く、モノづくりの難しさ、作り手としての粘り強さ、そして無事に納まったときの喜び、醍醐味をいくつもの機会で教えていただきました。
弊社の創業よりももっと前から続けてこられた二代に亘る日時計製作を、任せたいと考えてもらえる会社で在り続けるために、今後もクラフトマンシップを大切にこの日時計づくりを継承してまいりたいと思います。

左:サンダイアリスト 小原 輝子さん  
中央:ダイカン 牧 智之  右:株式会社インプレス 稲葉 亘快さん

◼︎なぜダイカンに

あなたは「門内の小娘、習わぬ日時計を作る」を歩んだわね、と友人が言いました。その通りです。製作依頼を受けてから完成まで、多くの方々の力をいただいて日時計作りを続けてきました。新聞やテレビのインタビューで「後継者は?」の質問に「ニコッ・・・」と笑って誤魔化していましたが、未来永劫に私が携わることは出来ません。
日時計を完成させるにはいくつもの職種と工程があり、父も私も、あちらの工場、こちらの仕事場と職人さん達の間を飛び回ってまとめていました。自分で書いた手書き図面の時代、とことんアナログな作業も苦にならず、職人さんの個性に出会うのも、各工場の色も香りも楽しかった。
シンガポールで開かれた見本市の展示に日時計の写真を使いたいので貸して欲しい…が事の始めとなり、工場間を走り回っていた私を“見るに見かね“た稲葉氏が「一か所でまとめなさい」とお膳立てしてくださった先が、他でもないダイカン様です。

小田急 山のホテル
こどもの国(横浜)
某教育施設
江の島サムエル・コッキング苑
某教育施設

以来うん十年、その間にはダイカン様の失敗も手違いもありました。函館や佐久の設置工事の真っ最中に製作手違いが解り、私は途方に暮れ、その矛先はダイカン様の担当君に向かいます。震えながら電話で怒鳴り散らしたこともある。電話の向こうでは、たぶん青くなっていたかもしれません。
さまざまな悪戦苦闘の経験があり、全てクリアし引き渡し日に間に合わせたからこそ信頼関係が強くなり「任せて安心」が生まれたのです。
これからは若い能力に託します。あのピラミッドを建てた時代にエジプトで活躍した日時計作家は大先輩です。日時計を作るとは、何千年も連綿と引き継がれてきた歴史的な誇れる職業です。

小原式水平型精密日時計
サンダイアリスト・小原 輝子

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