なんば 戎橋筋商店街

若者と訪日外国人で賑わう食い倒れの街

なにわ名物 いちびり庵

若者や訪日外国人で連日賑わう食い倒れの街「大阪ミナミ」のど真ん中、グリコの看板で有名な戎橋から髙島屋大阪店まで(距離にして370m)を南北に結び、創業100年以上の老舗から流行店まで立ち並ぶ「なんば戎橋筋商店街」。

そこで個性的な大阪土産を販売する有名店「なにわ名物いちびり庵」を運営する「株式会社せのや」の野杁育郎さん(取締役会長)と福岡武志さん(取締役社長)にお話をお伺いしました。

左:株式会社せのや 取締役会長 野圦育郎さん
右:株式会社せのや 取締役社長 福岡 武志さん

「キタとミナミ」

◼︎相反する個性がおもしろい

大阪を代表する繁華街といえば、「キタとミナミ」が挙げられます。
ともに明確な地域の範囲や線引きはありませんが、キタはJR大阪駅周辺の梅田、北新地、堂島、中之島、西天満あたり、ミナミは難波駅周辺の道頓堀、心斎橋、日本橋あたりがイメージされます。キタは百貨店や高級店がひしめき合う上品で洗練された大人の街。対してミナミは大衆文化の賑わいや、アメリカ村を筆頭に活気溢れる若者文化の発信地である印象が強く、千日前の法善寺横丁は落語家や文豪など様々な文化人からその風情をこよなく愛された地域です。
正統的な香りを残すスタイリッシュで都会的なキタ。庶民的でディープな大阪人が集う町人文化のミナミ。大阪はそんな相反する性質の繫華街を有しています。

◼︎お店のデザイン・コンセプト

福岡)「いちびり庵」は、このエリア(ミナミ)の狭い範囲内に3店舗を運営させていただいています。
同じミナミでも通りごとにそれぞれの歴史や由緒由来がありますので、実はお店ごとにコンセプトを変えています。なんば店(千日前)であれば、かつての「楽天地(※劇場、演芸場などを有した大正時代を代表するレジャー施設)」のハイカラな一大繁華街を感じてもらえるような空間をイメージしています。

おみやげ処いちびり庵 なんば店

福岡)道頓堀店であれば古くは芝居町(※歌舞伎、義太夫、見世物などの小屋で栄えた。現在でも大阪松竹座、国立文楽劇場がある)だった土地ですから、昔は多くの大人たちがこぞって練り歩いたストリートだと考え、大人の遊園地というテーマで内装をデザインしてもらいました。
とはいえ来店されるのは現代の方ですから、やっぱり目の前のお客様に喜んでいただくことが一番大切だと考えたら、至るところにカラフルな商品を敷き詰めて、お祭り感というか、いかにも大阪らしい賑やかで楽しい雰囲気のお店にしようとは思っています。

なにわ名物いちびり庵 道頓堀店

◼︎今でもピカピカの看板

ダイカン)ダイカンが2008年(15年前)に作らせていただいた「えびすばし本店」の看板がいまだにピカピカで、製作メーカーとしてはとても嬉しく思います。普段からお手入れはされているのでしょうか?


福岡)定期的に外壁メンテナンス(年2回)は行っていますが、アーケード内で雨に直接触れないこともあってか、ひどく汚れていたことは本当にないのです。清掃の度に我々も「いい仕事をしていただいたな」と喜んでいます。


ダイカン)こちらこそありがとうございます。
看板を大事にされているということは、店内も従業員の方も大事にされているだろうな、店主様の思いが伝わってくるなと感じます。


福岡)ありがとうございます。
もちろん、そうあるべきであると考えています。

硬質ウレタンフォームをかまぼこ形状にカットし、
光沢塗装を施した文字
なにわ名物いちびり庵 えびすばし本店

◼︎会話から生まれるおもろい商品

オリジナル商品はまだまだ多くはないのですが、主力になるお客様は観光の方なので、大阪の歴史や文化を何とか伝えられないかっていう思いは昔から根底にある考え方なのです。
ですからできる限り大阪府内の企業様にお世話になって形にしていきたいというのが第一にあります。そして、お土産自体が消費物として扱われるのではなくて、「大阪って実はこんな場所なんだよ。おもしろいよ!」っていうような会話が生まれるポイントを付加価値として必ず一つは付けたいな、という思いで商品を企画していますね。

また、店内がとても賑やかだと喜んでくださいますが、お土産のパッケージ自体が大阪をイメージして色鮮やかなものをメーカーさんがデザインされていますので、図らずともお店の雰囲気が賑やかになっているという理由もあります。一方で、昔からこの土地をよく知る地元の人たちの間では、「本体の大阪らしさって何やろか?」と言う声もあり、最近では古典的なものを色々取り入れられてパッケージに表現されているものも増えてきました。

①なにわちょろけん ちょろけんぴ
②いちびり庵オリジナル たこ焼きようかん
店内の様子

◼︎品揃えについての考え方

店内にはシックなものから賑やかなものまで色々と品揃えしています。よく売れる商品はもちろん大事なのですが、売れていないから、売れなさそうだからという話が事前に入ってきても「大阪のみやげ、おもろいな」くらいに思ってもらえるのであれば1回置いてみようと考えています。


大阪の文化には「ええやん、ええやん、一緒にやろうや」みたいな懐の深さというか柔らかい雰囲気があるので、品揃えに関しては、売れる、売れないにかかわらず、大阪のモノであれば「いっぺんやってみよう」っていう考えは常にありますね。

海外からの観光客に人気のお土産

◼︎後から気づく大失敗

観光地ということもあり、もともと外国人が多い土地なのですが、基本的に国内のお客様を大事にして、しっかり大阪土産の店としてご贔屓にされていれば、海外から来られた方にも間違いなくご利用いただけるであろうと考えています。インバウンドをあてにした外国の方向けに品揃えした結果、日本人のお客様にそっぽを向かれたら元も子もありませんから。そうなったら本来やりたいこと(商売)と違ってきますからね。


とはいえインバウンドの兆しが見えだしたころ、売れ筋商品のどら焼きにハングル文字を刻印したものを試したことがあるのですが、これは失敗しました。よく考えたら、自分が海外に行って日本語が書いている商品を買うか?みたいなことに後から気付くのです…大失敗でしたね…笑。


現在はこのような理由もあって海外の方向けに「コレ」というものは用意していないのですが、結果的に欧米の方によく売れているのはマグネットとかポストカードですね。統計をとっていくと外国人のご来店が増えたときにこの商品の売上が顕著にドンっと上がりますから。コレクターの方もおられる商材なので特に驚きはないですね。あと面白いのは中華圏含めアジア圏の方々は別の傾向があって、一番買っていただけるお土産は日本人と同じでお菓子なのです。きっと家で帰りを待っている家族やお友達に配るのでしょうね。やっぱりそういった文化や習慣が近いのかもしれません。

①たこパティエ
②大阪名物くいだおれ太郎のフルーツ引
③ご当地マグネット「OSAKA JAPAN」
④ポストカード

戎橋筋商店街が目指しているもの

◼︎入場無料の博覧会場

大阪ミナミの商店街は「食べるところ、買うところ、楽しむところ」、いっぱい面白いものがあります。その魅力をもっと発信していきたいと考えています。戎橋、千日前、道頓堀、宗右衛門町、エリアによって雰囲気も違うから百面相の街って言われる方もおられますが、様々な個性が光り輝いている商店街、街全体がテーマパークになっているような「入場無料の博覧会場」にしていきたい。

なので、これは時代というか仕方ない部分もあるのですが、どこでもお馴染みのチェーン店ばかりでは寂しい。その街にふさわしい、そこにしかないお店がある、ということが商店街の楽しさでもあるので、ここは大事にしながらやっていきたいと思います。

◼︎地元に愛され、贔屓される街に

これからも大勢の外国人観光客の方が商店街を歩かれ、お客様の顔ぶれは変わっていく。戸惑いもありますが基本的に人の流れが増えるのは嬉しいことなので、目の前のお客様に対して自分たちのことをどのように認知してもらい、ご愛顧いただくのか。老舗のお店でも食べ歩きできるものを店先で始められたりして、皆さん頑張っておられます。言わずもがな大阪府内の方にもっと気軽にレジャーでお越しいただくことも大事ですから、地元の方が喜びそうな企画やあらゆる入口を模索してどれだけリピーターを増やせるか、時代の流れに沿ってアップデートも必要だと感じています。


例えば昨年リリースした「えびなび」というアプリもその一つです。定期的に戎橋筋商店街からの案内が届いたり、毎日遊べるくじ引きやお買い物でポイントも貯まります。あと、トイレやフリーWifiのある店舗を探せたり、便利機能を盛り込みました。あらゆる試行錯誤を重ねながら地元の方に愛される、贔屓にされる街にするという原点回帰の考えで再出発しています。

◼︎商店街の未来について

大阪に新しい電車の路線、なにわ筋線(2031年春に開業予定)が誕生します。
これができると、関西国際空港から難波を経由せず、新今宮を分岐点として大阪駅や新大阪、京都に行けますので、難波の賑わいを保てるのか、人の流れをこのまま維持できるのかという危機感は強いです。万博(2025年4月に開催)へ向けて、これから世界中のお客様が来街されますので、なんば駅前広場(髙島屋大阪店前のロータリー)の整備(なんばひろば改造計画)なども先輩方が協議会(なんば安全安⼼にぎわいのまちづくり協議会)を作られました。知見者の方も含めて『官民協力』のもとで社会実験を繰り返し10年以上の歳月をかけてやってきました。

ミナミの来街環境を改善するインフラ整備などは、どちらかというと戎橋筋商店街の動きで、道頓堀商店街に関してはエンタメ要素を強めて、より集客に力を入れて地域に貢献しようと取り組みをされています。力のある(人気のある)お店は商店街の垣根なく地元に複数出店されていますし、この四半世紀で戎橋筋、道頓堀、宗右衛門町などミナミ地域のネットワークが強くなってきたイメージはあります。どのような客層に着目していくのか個々の店舗では課題に向き合いつつも、大阪万博も控えているしコロナも収束に向かっている(2023年現在)。

観光地としての大阪ミナミにとっては期待感をもって、人も街も変わっていこうとみんな前向きで取り組んでいますよ。周辺の大阪ミナミの商店街は飲んで食べての食い倒れ、ド派手な看板で囲まれた元気いっぱいの街です。大阪にお越しの際は、ぜひ足をお運びください。

左:株式会社せのや 取締役社長 福岡武志さん
中央:株式会社ダイカン 代表取締役社長 仁義修
右:株式会社せのや 取締役会長 野杁育郎さん

◼︎「いちびり庵」の「いちびり」とは

関東の方で「一番ビリという意味ですか?」と聞かれる人がいるのですが、これは大変な間違いでして…(笑) もちろん関西人がよく知っているみたいに「ふざけ回る、はしゃぎ回る、目立ちたがり屋」などが、本来の「いちびる」という意味なのですが、「いちびり庵」の「いちびり」は、漢字で書くと「市振り」。
いろんな青物市場とか行くと「売った、買った、売った、買った」って、手でやっているのを見たことないですか。「市振り」とは身振り手振りで値決めをするさま、ひいては市場を取り仕切っている人のことです。市場というのは町の中心になっているものですから、市を仕切れるということは、町も仕切れる。自身が仕切っている町でリーダーシップをとるということ。


我々なりに「いちびり庵」の「市振り」として、プラス思考で楽しく一生懸命に街(商店街)のことをしている(盛り上げる)つもりなのです。でも時々「いちびりが足らん」って怒られることもあるのです。いちびりやったら(もっと目立って・頑張って)当たり前やろうっていうね…。いちびりっていう言葉の意味は深いなと考えさせられます。

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